最近は1人や2人の受講生を講習する事が続いてたりしましたが
講習の合間の、ある休憩中の事でした
講習会場の建物は
2階は4名の学科講習をするのでいっぱいなくらいの広さですが
1階は更に狭くて、トイレと小さな流し台があるくらいです
そのステンレスのシンクの隅っこに
その日は何故かスズメが半分羽を広げるような形で
コーナーに頭を押し付けてうずくまっていました
プルプルと体を震わせていて
「あ~……これは長くはないなぁ」と思いつつも
水道をちょろちょろ出して、指先に付けて
それをスズメの口ばしに垂らしました
しかし、それを飲もうとは一切しないでうずくまったままでした
講習の続きをする為、2階に戻り
教本の解説をはじめると、すっかりそのスズメの事は忘れてしまい
夕方、講習会が終わり受講生達が帰ったところで
ふとスズメの事を思い出しました
流しを見てみるとスズメの姿がありません
何処に行ったのかと、1階のあちこち、物の裏側など
だいたいのところを見てみたのですが見つかりません
もしかして……と流しの排水口を覗くと
排水口の中のゴミ受けの中に丸まってぐったりとしていました
もう本当にぐったりです、死んでしまったようです
力を振り絞って動き出して
誤って排水口に落ちてしまったのでしょう……
そこで力尽きてしまったようです
そのスズメが入ったプラスチックのゴミ受けごと取り出し
そのまま講習室横のスロープを海側に降りて
海に捨ててしまっては可愛そうなので
プラスチック製のパネルのような物の陰に
そっと置いておきました
鳥などは細菌がついているから触れないように
よく言われていますが、指先でふわふわの頭を撫でました
やわらかい、いい感触ですね
ちゃんとその後すぐ手を洗いましたよ
次の日、船を掃除をする為に来た時に
またスズメの事を思い出しました
掃除をする前
プラスチック製のパネルの裏を見て見たのですが
スズメがいなくなっていました
確かに、そこに死んだはずのスズメを置いたのに
その周辺を簡単に見て回っても見当たりません
「土に埋めなくてよかった~」そう思いました
しかし、そのスズメの話はこうして文字に書いていますが
私以外、誰もそのスズメを見ていないのです
つまりその出来事を見て知っているのは私だけ
誰にも証明しようがない
そういう出来事って意外とあるのかもしれません
何処か旅行先で知り合った人についてもそうかもしれません
会話を交わして同じ時間を過ごしたとしても
その後の人生で2度と出会う事がなければ
後々、その人と会った事を証明する事ができなければ
それはつまり、その人はいなかったのも同然のような……
口伝えの物語の一部のような曖昧な存在です
あなた自身も誰かの人生の単なる通りすがりで
現実に存在しているかどうかの重要性もなく
その誰かの記憶にだけに存在しているような……
あるいはその誰かの妄想の中の一部に過ぎないのかもしれません
思い出なんてそんなもんです
